「アートDEデート」は5対5のいわば合コン。男性(アーティスト)側の参加者は渡辺おさむ、尾竹隆一郎、阿部隆大、水野俊紀(Chim↑Pom)、大塚聰の5人で、司会はアーティスト・松蔭浩之と俳人・北大路翼の2人が務めた。
以下、女性側から経済力に関する質問が飛び出した場面を文字起こしした。
<引用始まり>女性公務員1番「現在の経済状況と、今後の経済的展望を」
アーティスト1番・渡辺おさむ「僕は良いです。今後も大丈夫だと思います。お金の管理は税理士に任せているのでよく分からないけど、何とかやっていけると思います」
司会者・北大路翼「がちでお金持ってそうですね」
渡辺「ありがとうございます」
アーティスト2番・尾竹隆一郎「僕は全部親の仕送りです。作品を作ると、また作らなくなってしまう…」
司会者・松蔭浩之「引きこもりですもんね。作った作品は?」
尾竹「眠ってます」
松蔭「一緒に眠っていると。将来の展望は?」
尾竹「どうにかなるんじゃないかと」
松蔭「どうにかすると。アーティストなんだから心配するなと」
アーティスト3番・阿部隆大「僕は作品を売っていなくて、普段、事務所に所属して商業カメラマンとして働いています。雑誌とか。7万3千円のマンションに住んでいます。8畳の1Kです。今後の展望は、仕事で写真を撮って潰しがきくんですよね。絵とかと違って。だから、バランス良くやっていきたい」
松蔭「松蔭浩之(自分)みたいになりたいと。商業の仕事もし、ファインの仕事もすると。ある画廊のオーナーが言っていたけど、そんな二足のわらじをはくようなやつは面倒みないと(笑)。逆にタフになる。阿部君はそういう素質を持ってる」
アーティスト4番・水野俊紀「現在はよくないんですよ。Chim↑Pomやって、作品はおかげさまで売れるようになったんですが、それ(収入)は次の作品に使ってしまって」
松蔭「被災地にすぐに募金したり。(Chim↑Pomメンバーは)6人でやってますしね。(収入は)6等分?」
水野「6等分です。今はよくないんです。でも、Chim↑Pomですからね。3…、5年後には俺、ハマーに乗ってます。キムタクが乗ってるやつ。サーフィンやってると思います、俺。で、アシスタントに全部やらせて、コンセプトだけ言って。3、4年後ですよ。……あ、ハマーやめましょう。こんな時代だから。エコカーにしましょう。一番良いエコカー」
アーティスト5番・大塚聰「えー。私、最近、手が速くなり始めましたが、以前はかなり遅くて、絵がなかなか完成しなくて、はっきり言って、絵で食っていくのは不可能に近いんです。
松蔭「さあ、どうやって生きていこう」
大塚「一応、まあ、絵とは関係ない仕事をしてまして、二足のわらじって言うんですかね」
松蔭「それ、公開して良ければ…」
大塚「管理業というか。そんな格好良い仕事ではないです。それから、プレゼン能力が全然ないんで、それもかなり売れない原因です」
北大路「アピールして下さい」
大塚「(経済状況は)まあ、ぼちぼち。一応、有名なコレクターが私のことを理解してくれて、作品を買ってくれることがたまに…」
<引用終わり>
さて、軽く検証。図らずも(主催者のキャスティングの妙?)うまくケース分けされていた。
「フェイク・クリーム・アーティスト」を自称する渡辺さんは、どうやら経済的にも軌道に乗っている様子。生クリーム(に似せた材料)で立体を埋め尽くすヴィジュアルは個性的だし、女子(あるいは一般媒体)受けもばっちり。世界遺産のシリーズはコンセプト的にも今後の展開が期待できそうだ。
典型的な美大卒若手アーティストを思わせる尾竹さんは、現状ではアートで飯が食えず、かといって別に労働に励んでいる様子もない。経済的な問題を問題としてとらえない体(てい)が、かえって典型的に見えて切ない。親からの仕送りがいつまで続くのか……。
写真家の阿部さんは、商業写真家として自立できている模様。トークショー「最近、日本のアートとかって、なんかヘボくなってない?」に出演した写真家の鈴木心さん同様、フォトアートとコマーシャルフォトのバランスを保ちながら生き抜くつもりのようだ。むろん、商業写真もまたクリエイティブな職業であることには違いない。
水野さんはもはやメジャーと呼んで差し支えないはずのアーティストグループ「Chim↑Pom」の一員だが、少なくとも裕福ではない様子。耳目を集める作品が多いChim↑Pomだが、メンバーが6人いる上に大量生産型の作風ではなく、1点1点がよほどの高値で売れるようにならない限りは生活は安定しないだろう。
大塚さんは「管理業」が生業とのことで、まったくアートと関係のない業種に就いて安定収入を得ているようである。有名コレクターの理解もあるとのことで、制作のペースは遅いながらも、一部の承認を得ながら今後も安定的に活動を継続していけそうだ。
司会の松蔭浩之が、ある画廊オーナーの言として「二足のわらじをはくようなやつは面倒みないと言われた」などと笑いながら茶々を入れていたが、この「専業思想」が必ずしも冗談ではないところが厄介なところだ。